暗さのもとにある小さな光

『オールドレンズの神のもとで』/堀江敏幸

 

この本は18篇の物語が収録された短編集である。

1篇の文量は少ない。短くて見開き1ページ、長くて15ページほどである。

何篇か落ちが分からない物語もある。(私はⅡ1篇目「リカーショップの夢」の落ちの意味が分からなかった)

 

全体の雰囲気は暗い日陰のような雰囲気である。しかしその暗さの中に小さな光がある。その光はある人にとっては無価値なものであるが、ある人にとっては大切な光である。この本にはそんな美しい、言葉にできない光がそれぞれの物語に閉じ込められている。

 

 

無機質なはずなのに植物の描写や色の描写から瑞々しさが感じられる。

日常が書かかれているはずなのに遠く離れた場所のことが書かれているように感じられる。

この本はなぜか先へとページをめくらせる不思議な魅力がある。

 

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本を読んでいる途中で顔をあげる。

机の前にある小さな窓を開けて、外にある大きな栗の木を見る。

窓の外から吹いてくる風を感じる。肩の力を抜いて深呼吸をする。

私はこの静かな生活が好き。