夏の冒険はじめました

『サマーバケーションEP』/古川日出男

平成22年(2010)6月25日 初版発行

文藝春秋より刊行されたものを文庫化したもの

 

まず、文章の書き方が面白い。

1文がとても短い。

読む人を選ぶ書き方であると思うが、私は詩人の書いた小説という感じがして好みだ。

 

人間の顔が皆同じに見える主人公は、人が着ている服や人の身長、名前、年齢で人間を判別する。年齢を判別するときは、その人の匂い、皮膚の感覚、声色を敏感に感じとり、超能力を使うように年齢を判別している。

 

「もちろん、時どきは香水に惑わされます。香水はいろんなものを消してしまいます。一人ひとりの体臭を隠して、同じ香水をつけた人をあれって思うほど同じ人間にしてしまうし、年齢もわからないようにしてしまいます。」

(p.6 l.15)

 

この言葉から、私はその人が纏う香水や服からその人の内面を認識しているのかなと考えさせられた。香水や服といった記号で人の性格・趣向を判断し、その人の人間性を見ずに自分の中に既にある人間フォルダに入れて人を認識することは往々にしてある。

 

人間の判別について考えながら、顔の区別がつかない主人公とちょっと遅い夏の冒険を始めてみる。

 

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横道: 吉祥寺のクレオパトラケバブは、イートインスペースもあるし、お肉がたっぷりでうまい。

 

 

 

[ひとくち文化]

昨日は金曜日だった。はるかリセットの更新日だ。

 

はるかリセット/野上武志(チャンピオンREDコミックス)秋田書店

 

第61話のはるかリセットは国立ハンセン病資料館にてリセット&リブート。(はるかリセットらしく言ってみたかった)

私も小学生の頃に社会科見学でここに訪れたが、その際に患者たちが居住していた部屋を見て衝撃を受けたことを覚えている。61話でもその部屋の寒々しさが表現されていて良かった。

どの回にも言えることだが、はるかリセットは、丁寧に取材されていて頭が上がりません。

なかなかリセットに行けない社会人に週1でリセットをくれるありがたい漫画だ。